| 最近、調査業界でもよく話題になる『エスノグラフィ』。弊社では調査プロジェクトのタイトルに用いることもあり、社内で軽く『エスノ』などと略しているが、本来は「人類学者が、人間の社会と文化を研究する上で用いる質的調査法のひとつの形態」(『質的調査法入門』S・Bメリアム著)と言われている。 |
| 人類学者と言われた時点でうかつに『エスノ』などと略してはいけない雰囲気にもなってくるのだが、人類学者において『エスノグラフィ』には2つの意味があり、ひとつは「データ収集の際に用いられる一連の方法」、もうひとつは「『エスノグラフィ』の技法を用いた調査の記述記録」と論じられている。単にこの技法を用いてデータ収集を行なった、ということだけでなく、そのデータを社会文化的に解釈し「研究対象となる集合体の社会文化的分析」を行なうことが、『エスノグラフィ』であり、帰結点は「他文化の理解」ということのようである。 |
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| 調査における『エスノグラフィ』とは |
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| 弊社内で使用している「エスノ」というワードがここまでの重みがあるものとは思いにくいが、人を見る、人を掘り下げるという調査の視点で言うならば、他文化=自分以外の他の人であり、その人となりや生活をより深く理解するための方法が『エスノグラフィ』ともいえる。 |
| 反応や評価をその場でチェックしていくのではなく、その人が積み重ねてきた個人的な経験を通して今持っている意識や、それに基づく行動を出来るだけ共有し、理解する。調査票上の回答や、一回のみのインタビューだけではとらえきれない生活者の経験を包括的に脈絡でとらえる。このような「調査」というより「人間研究」に近いスタンスで取り組む仕事に関しては『エスノ』というワードを用いることが多い。まだ確立されたものではなく、実際これが『エスノグラフィ』というテーマで語れるべきかわからないが、弊社での『エスノ』的な調査の手法部分について触れたい。 |
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| どんな時に『エスノ』が登場するのか |
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| 『エスノ』的な調査依頼が舞い込む時には、クライアントの担当の方々がいつもと違う空気を発している感じがある。「自分たちが作ったテスト品の消費者における評価を知りたい」という熱い依頼とはまた違う、「人をじっくり見てその背景にある意識を知りたい」というとても人肌感覚の、しかしちょっと微熱な依頼。ふだん「○○の意識と実態」でまとめている部分について「そもそもなぜこの意識、この実態」とあらためて問い直すことから『エスノ』的な調査は始まる。 |
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| 「人は毎日どうやって自分の食べるメニューを決めているのだろう?」「女性は自分の肌の調子になぜ一喜一憂するのだろう?」「女性は理想の髪をどうイメージしてそのためにどんなケアをしているのだろう?」… |
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冷蔵庫の残り物と相談する、自分が食べたいものをお店で見て決める、家族のリクエストに応える…でメニューを決める。
ファンデーションののりが悪いと一日不機嫌になる、吹き出物があると顔全体が汚くなる…から肌の調子に日々一喜一憂する。 |
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| 等々、上記の問いかけにある程度答えることはでき、それをもとに調査票を作れば定量的に検証することもできる。でも本当にそれだけの意識なのか。もっと深く考えていたり、もっと何気ないことであったり、その時々で揺れ動く微妙な心理があるのでは…それをもっと追い求めたいという気持ちで発生するのが『エスノ』である。生活者はきっとこう考えているはず、という机上の決め付けではなく、生活者空間発でリアルな意識・態度を研究する。これは、従来の市場調査やマーケティング活動についての、下記のような誤りに対する反省が出発点になっている。 |
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『エスノ』は生活者と何らか共有することで生活者を理解し、「気づき」
を見出していくものである。それにチャレンジしたい、とするクライアント
の気持ちが下記の反省点を踏まえたピュアなものであるから、「いつも
と違う空気」が感じられるのかもしれない。
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【従来の市場調査やマーケティング活動についての6つの誤り】
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×1. |
生活者の思考プロセスは筋の通った合理的なものである |
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×2. |
生活者は自らの思考プロセスと行動を容易に説明することができる |
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×3. |
生活者の心・脳・体、そしてそれを取り巻く文化や社会は、個々に独立した事象として調査することが可能である |
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×4. |
生活者の記憶には彼らの経験が正確に表れる |
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×5. |
生活者は言葉で考える |
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×6. |
企業から生活者にメッセージを送りさえすれば、マーケターの思うままに、これらのメッセージを解釈してくれる |
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『心脳マーケティング』ジェラルド・ザルトマン(ハーバード大学経営大学院名誉教授)著より抜粋 |
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