40年くらい前に私が心理学専攻の学部学生だった頃には、人生をあらわす言葉は3つでした。「子ども」、「大人」、「老人」。1950年から2000年までの50年間に、平均寿命が30年伸びました。これは非常に驚異的な現象で、寿命革命と呼ばれています。この寿命革命によってライフステージに新たな人生第4期が登場したのです。もちろん昔から80歳,90歳の人がいたわけですが、非常に数が少なかった。今は普通に生きれば人生第4期になるわけです。
この人生第4期は、私たちのライフステージに新たに加わった時期ですから、私たちはまだよく理解していません。75歳以上のいわゆる後期高齢者は、大体認知症か、要介護というのが世間の通念です。産業界もこの人たちを対象とした市場は一義的に医療・介護だという認識が一般的ですが、それは非常に大きな間違いです。後でデータをお見せしますが、大多数の人達は年相応に元気で、自宅で普通の生活をしています。人生第4期の理解が非常に不十分です。産業界で物やサービスを作っていく上でも、あるいは政策を作っていく上でも、この時期の人たちの生活を的確に理解することが必須であると思います。
人生第4期の人達について、科学的なデータがまだない。これは、私たち大学の任務でもあります。疫学的な調査、R&D社の様なマーケットの方から高齢者の生活を把握する調査、両方でやっていかなくてはいけない。これが今非常に大切です。学界、産業界が共に人生第4期の実態やニーズをもう少し正確に理解する努力をする必要があると思います。
私も調査が専門ですが、非常に困っていることがあります。従来通りの調査方法では、後期高齢者の調査がうまくいきません。例えば、1時間の面接調査に協力できるのは、体が健康で、認知能力もしっかりしている人に限られます。しかし、後期高齢者にはそういう状態ではない方が少なからずいらっしゃる。ものやサービスを作っていくのには、元気な方だけの情報だけではなく、後期高齢者全体の平均がどこにあり、どのくらいのばらつきがあるかということも含めて理解する必要があります。新たな調査方法を開発していかなくてはいけません。従来の若い人たちを対象にした調査方法を後期高齢者に適用するとバイアスのかかった情報になります。また、60歳や65歳以上を一括りにして情報を集めても、あまり役に立たないと思います。R&D社でやっていらっしゃるように、少なくとも人生の第3期と第4期ぐらいは分けてデータを集めていく必要があるのではないかと思います。【図1参照】 |