調査レポート

商品コンセプト開発のツール“CORE”③

3.欲求構造を定量化する試み

 商品コンセプト開発のためのリサーチ・システム“CORE”(首都30㎞の18~69歳の男女個人3000サンプルを対象に、各年11月にパネル調査として実施する”生活ニーズ測定調査“を分析のベースにしている)は、生活者個々の欲求を構造的にとらえ、欲求の構造によって生活者をパターン化し、ポテンシャル・ニーズ・クラスターとして生活者のターゲット化を試みている。
<欲求の記号化>
 生活者個々の欲求構造を測定するためには、欲求がことばとして記号化されなければならない。
 “CORE”では欲求のあらわれ方とその背景にある社会的意味を、各種の実験・研究をふまえて図6のように記号化している。

図6 欲求の記号化

 生活全体でとらえた記号をベースにして、さらにマーケティング活動の主要な対象領域である食・装・住・レジャーの各生活領域ごとに、欲求をことばとして記号化している。
<欲求測定の方法>
 “CORE”では欲求の測定にコンスタント・サム法を採用している(図7参照)。

図7 欲求測定のための調査シート

コンスタント・サム法はまず調査対象者に配分すべき一定の量(チップ・シールが用いられることが多い)を与え、用意した質問の各カテゴリーに対する反応の強さに応じて与えた総量を配分させる方法である。
 この方法によって、欲求を定量的にとらえられることが可能になる。欲求の強さはシェアとしてとらえられ、各々の相対的な位置づけができる。またシールの貼付けのパターンによってそのままクラスター分析が可能であり、ポテンシャル・ニーズ・クラスターが作成される。
<欲求の構造とその社会的背景>
 “CORE ’84”(1983年11月調査)によって測定された生活者全体の欲求の構造は図8の通りである。

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 これは生活領域全体を総合的にみたものであるが、図の示すとおりそれぞれの欲求の強さ(シェア)は、安定欲求(39%)、参加欲求(30%)、ついで変動欲求(20%)、自由欲求(11%)の順である。最もシェアの大きい安定欲求は「心身ともに健康でありたい」という健康欲求因子が強くあらわれ、参加欲求は「家族や仲間とたのしくすごしたい」という団らん欲求因子が強くあらわれている。変動欲求は「何かに取り組み自分を高めたい」という創造欲求因子、「いろいろなことを知っておきたい」情報欲求因子が強くあらわれている。
 “CORE”では生活者の環境認識・生活観など社会的意識・態度のあり方をとらえており、欲求とのかかわりを分析することによって欲求構造の社会的な背景を理解することができる。
 安定欲求は、社会的関心が低く保守的で、自分に相応な堅実な生活を志向するという社会的関心が低く保守的で、自分に相応な堅実な生活を志向するという社会的意識・態度のパターンを示している。
 参加欲求は、社会的格差が拡大するという認識のなかで生活にゆとりをもち“中の上”階層意識を形成し、まわりとのつきあいを重視しながら生活の向上に努力するという前向きのパターンを形成している。
 変動欲求は、社会環境を楽観的に認識し、新しい現代的なくらし方を志向し、生活の向上に積極的に努力するという積極的な意識・態度と関連してとらえられる。
 自由欲求は、格差が拡大しており努力しても報われないという社会認識のなかで、自分の時間・自分の暮らし方を大事にしてあくせく努力をしないというパターンを示している。
 “CORE”は欲求構造の動態を知るために時系列分析を行っている。そのごく大まかな内容を示すと次の通りである。
 まず、欲求の構造が安定的であること、安定的ではあるが、一定の方向性をもって変化をしていることが指摘できる。増加傾向を示している欲求は、変動欲求であり、次いで自由欲求である。変動欲求は変化欲求・情報欲求・創造欲求というすべての欲求因子のウエイトが増加し、自由欲求は気まま欲求・個性欲求といった欲求因子のウエイトが増加している。増加傾向をもつこれらの欲求が具体的にどのような生活行動の変化をもたらすかをとらえることによって、新しい生活ニーズを探索することができるのである。
<年齢間ギャップ>
 欲求の構造には年齢階層間のギャップがみられる。若い世代ほど変動欲求が強く、逆に高齢世代ほど安定欲求が強い。自由欲求は若い20代の世代において強くあらわれる(図9参照)。

図9 年齢階層別にみた欲求の構造

 変動欲求・自由欲求は若い世代ほど強いという構造をもちながら全体として増加傾向を示しており、時代の変化をとらえるために注目すべき欲求であるといえよう。
<生活領域間のギャップ>
 ここまで生活領域を総合的に見て欲求の構造を明らかにしてきたが、マーケティングの主要対象領域である食・装・住・レジャーの各生活領域における欲求の構造を測定すると、そこにおける欲求構造には大きなギャップがみられる(図10参照)。

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 食生活領域においては、変動欲求が極めて強いことが注目される。これが「食文化」の背景となっていることは言うまでもないであろう。
 装生活領域においては安定・変動・参加・自由の4つの欲求がほぼ均等な強さを示しており、自由欲求が他の領域に比して最も強いことが特徴である。アパレル産業における問題の背景がここにみられるといえる。
 住生活領域及びレジャー生活領域における欲求構造は、安定欲求、参加欲求が主体という生活領域を総合してみた場合に近似した構造を示している。レジャー生活領域においては変動欲求は極めて小さい。
 ところで、生活者がどの程度満足しているかという充足の度合と、どの程度力を入れようとしているかという重視の度合から各生活領域を位置づけると、食生活領域は充足度・重視度がともに最も高い領域であり、装生活領域は充足度は高いが重視度が低い領域として位置づけられる。住生活領域・レジャー生活領域は充足度が低く、重視度との間にギャップがある生活領域である。
 われわれの分析によれば、生活の充足の度合が高くなるほど変動欲求が強まり、重視の度合が低下すると自由欲求が強くあらわれているという関係がとらえられる(図11参照)。

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このことから生活領域間の欲求構造のギャップは、生活領域における充足意識の状況によって説明することができるといえる。充足度の高い食生活領域、次いで装生活領域においては、モノの飽和を背景にして変動欲求が強く顕在化しており、特に食生活領域では創造欲求・情報欲求として強くあらわれている。充足度が低く重視度との間にギャップのある住生活領域及びレジャー生活領域では、変動欲求のシェアは小さい。重視の度合が低い装生活領域においては、気まま欲求・個性欲求といった欲求因子が主となって形成される自由欲求が大きなシェアを占める。
 生活領域を総合してとらえたとき、増加傾向にあるとして注目した変動欲求は、各生活領域別の欲求構造の時系列変化のなかで共通して増加している。各々の生活領域のなかで充足意識が高まり、生活が成熟していくという傾向を前提とするならば、ポテンシャル・ニーズとしての変動欲求が、食生活領域及び装生活領域において、具体的にどのような生活ニーズとしてあらわれているかをとらえておくことは、他の生活領域における生活ニーズ探索の有効なヒントとなるだろう。

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会社概要

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経営・マーケティング活動の評価及びコンサルテーション

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