#29 ショッピングモールの進化とマーケティング

ショッピングモールの進化とマーケティング

消費に特化した「街」

流行のファッションやおしゃれな雑貨が競うように並び、人気のカフェやレストラン、シネコンなどが集まった複合施設「ショッピングモール」は、家族やカップルで出かけて一日を過ごすことができる定番スポットです。気持ちのよい開放的なデザイン、ゆったりと伸びる通路、空間を贅沢に使った吹き抜けなどが、日常を忘れさせてくれます。なかには、広々としたキッズ向けスペースに、大型の遊具まで併設され、子どもたちが大喜び間違いなしの施設も。広大な駐車場、利便性の高いトイレなどの付帯設備も快適です。さらにはカルチャー施設やアミューズメント施設も備えた新しい「街」が続々とオープンして話題を集めています。これからもショッピングモールの進化は止まらないでしょう。それにともなってショッピングモールにおけるマーケティングの役割はどのように変化していくのでしょうか?

ショッピングモールの現状

日本ショッピングセンター協会によると、全国に約3000のショッピングセンターがあり、そこに入っているテナントの数はのべ16万店を超えています。スーパーやドラッグストアなど日常生活に必要なものを扱う業態と違い、ショッピングモールは商圏が広く、お客様がわざわざ出かけていくスポットになります。ショッピングを中心に多彩なコンテンツを組み合わせて魅力を高め、さまざまなイベントやセールスプロモーションで来場を促進したり、お客様を飽きさせないようにリニューアルしたり、新しいプロジェクトを常に導入しています。商品のディスプレイの仕方にもさまざまな工夫を凝らし、商品・サービスを買うという楽しみだけではなくエンターテインメントを取り入れて集客に結びつけています。
ショッピングモール間の集客争いは日々エスカレートし、生き残りをかけた戦いが各地で繰り広げられています。ECサイトの勢いが増しリアル店舗の存在意義が問われている今、ショッピングモールにおけるマーケティングには最新のデジタル技術の導入が求められています。

AR(拡張現実)とは

小売業界での普及・成長が最も期待されている先端技術がAR(拡張現実)です。ARとは「Augmented Reality」の略で、一般的に「拡張現実」と呼ばれています。実際の風景にデジタル情報を重ねてリアルタイムに表示し、眼前の現実世界を仮想的に拡張します。この10年間に爆発的に普及したスマホは、カメラとディスプレイ、アプリが一体化し、持ち歩くことができるので、ARととても相性のよいデバイスです。スマホの登場により、ARはモノを起点とした展開が可能になりました。商品パッケージやカタログ、ポスターなど多種多様なモノを認識対象とすることが可能になり、アプリ開発ブームを追い風にたくさんのARアプリが開発されました。最も有名なのが2016年にサービスが開始された「ポケモンGO」でしょう。GPS機能を使い、スマホの画面内に現実の風景とポケモンを一緒に映し出す位置情報ゲームです。

ARを導入したさまざまなサービス

ARを使って、商品購入後のシミュレーションができるさまざまなサービスが開発され、多くの業界が取り入れ始めています。インテリア業界では、カタログと専用アプリを使い、部屋の画像に家具の画像を重ねて映し出すことで、サイズを合わせたり、部屋の雰囲気にマッチするかどうか確認したりできるサービスが始まっています。ファッション業界では、デジタルサイネージ(電光掲示板)にお客様が体を映すと、性別や年齢に合わせて服を提案してくれたり、実際に試着しなくてもその服を着たときのイメージを掴むことができる「バーチャルフィッティング」のサービスが話題を呼んでいます。
観光地ではGPSを利用し周辺の観光施設情報や店舗の情報などをわかりやすく伝える取り組みがおこなわれ、スマホひとつで身軽に観光できる環境が整えられています。また、史跡などにスマホをかざすと、実際の建物が表示され、訪日外国人向けに英語翻訳も可能な音声案内が流れるサービスも運用されています。さらに、ご当地キャラや、土地にゆかりのある有名人が画面に浮かび上がり、旅先での写真撮影を盛り上げてくれたりします。

ショッピングモールとAR

人と情報が集まる空間であるショッピングモールは、ARとの親和性が高いので、幅広いシチュエーションでARが活用されると予想されます。たとえば、ショッピングモールを歩くお客様のスマホに、購買履歴や行動履歴にもとづきAIで解析されたお客様の好みやニーズに合わせたお勧め情報がAR(拡張現実)として表示されるようになるでしょう。
その他にも、スマホのカメラで検出されたショッピングアイテムに対して、価格、ユーザー評価などの有用な情報が重ねて表示できるようになるでしょう。 ショッピングモールの入り口近くにディスプレイされた商品にスマホをかざせば、扱う店舗への道順を詳しく丁寧に教えてくれます。POPでは伝えきれない、タイムリーな情報や商品情報の補足を伝えることもでき、単に飾るだけではない、販売に直結したディスプレイが可能になります。
モール内やイベント会場内の各所に隠れているキャラクターを探し出し、一緒に写真撮影ができる期間限定のイベントやスタンプラリーを開催すれば、集客と施設内の回遊促進が図れます。駐車場では駐車位置を記録するアプリが活躍します。車を降りるときにボタンを押して駐車位置を記録するだけで、買い物後に駐車場に戻って車を探すときにアプリ上の矢印の方向に向かえば駐車位置に到着できます。駐車時間も記録されるので駐車料金の管理も可能です。

ARが生み出すもの

広告・プロモーションでの利用から広がり、近年さまざまな分野での利用が拡大しているARは、日常生活の利便性を向上させ、未体験の楽しみを生み出せる新たな技術として注目を集めています。あの手この手でお客様の滞在時間を伸ばして施設を回遊してもらい飲食需要も生みたいショッピングモールにとって、ARは命運を左右する「打ち出の小槌」となるかもしれません。ARを駆使したマーケティングは近い将来、大きなチャンスを生み出すことになるでしょう。