「市場調査」と「マーケティングリサーチ」に違いはあるのか!?

市場調査とマーケティングリサーチ

混同されがちな「市場調査」と「マーケティングリサーチ」

市場調査の専門書を見ていると、「市場調査」という言葉と「マーケティングリサーチ」という言葉が同じ意味で使われているケースにたびたび遭遇します。しかし厳密には、この2つの言葉には違いがあるため、多少の違和感をおぼえることもあります。

それぞれを英語訳してみると次のようになります。
・市場調査⇒market resaerch(マーケットリサーチ)
・マーケティングリサーチ⇒marketing research

では、「市場調査」と「マーケティングリサーチ」は、そもそも一般的にはどのように認識されているのでしょうか?
そこでまず手始めに、この2つの言葉がネットで検索されるときに、よく一緒に検索されているワードをピックアップして、ネットユーザーが「市場調査」と「マーケティングリサーチ」について何を知りたいのか探ってみました。
すると、「市場調査」と一緒によく検索されているワードは「方法」「例」「英語」「レポート」。かたや、「マーケティングリサーチ」では「本」「志望動機」「転職」「業界」ということがわかりました。

「市場調査」と「マーケティングリサーチ」

このように関連ワードの検索をしてみると、ネットユーザーが2つの言葉に対して持っているイメージが、大まかに把握できます。「市場調査」には、具体的な調査の手法や成果に関する情報が求められている傾向が強く、「市場」を「調査」するものであるとの認識が十分いきわたっています。一方、「マーケティングリサーチ」に対しては憧れの人気職種の1つとして、さまざまな情報が求められている傾向が見てとれます。

2つの言葉が持つイメージがわかったところで、いよいよ本題に入りましょう。実際には「市場調査」と「マーケティングリサーチ」の間にはどのような違いがあるのでしょうか?
一般的に、「市場調査」が市場の動向をデータや数値で把握するためにおこなわれるものであるのに対し、「マーケティングリサーチ」は市場の内情からお客様の満足度に至るまでを、データや数値だけでは計れない潜在的なニーズとして察知し予測するものだといわれています。
「市場調査」と「マーケティングリサーチ」の違いを検証するために、まず「マーケットリサーチ」と「マーケティングリサーチ」がどのような内容を扱うのか具体的に比較してみましょう。

「マーケットリサーチ」

仮に、カップめんの新製品のマーケティング戦略を考えるとしましょう。それにはまず、カップめんの市場が現在どうなっているのか、市場に対する調査が必要になります。

たとえば、
・メインの消費者は誰なのか?
・一人当たりの消費数は?
・消費者は購入の際に何を重視しているのか?
・競合他社の数や各メーカーの市場占有率は?
・市場規模や成長率は?
・売れ筋商品の味・成分・ネーミングなどは?
などといった内容です。

世の中に既に存在しているデータ(例:自社内で過去に収集したデータ、他社が収集し管理している外部データ、政府・官公庁等による統計、非営利団体や研究機関が公表しているデータなど)の中には、自社に役立つ貴重なデータがあるかもしれません。これらは、セカンダリデータ(二次データ)と呼ばれているもので、自らの調査を実施する前に調べるべきものです。
このように既存データから市場を分析すること以外に業界団体にヒアリングに行くなどの方法もあります。もちろん調査会社を使って情報収集をすれば、これまでに調査会社が蓄積したデータやノウハウを効率よく活用することができます。
「マーケットリサーチ」によって、企業はデータや数値で現在の市場動向を知ることができ、企業の意思決定に大きな役割を果たすなど、マーケティング戦略の重要な部分を担っています。そして、この「マーケットリサーチ」の日本語訳には「市場調査」が使われているのです。

「マーケティングリサーチ」

次に、「マーケットリサーチ」に対する「マーケティングリサーチ」を考えてみましょう。ここでは、新製品○○のマーケティング・ミックスの4Pを考える場面を想定してみます。

①Product(製品戦略)→○○の商品名や味やパッケージなどをどんなものにして製品化するか?
②Price(価格戦略)→最大限の利益を出すためには○○の価格をどう設定すればよいか?
③Place(流通戦略)→○○をどのような販売チャネルで、お客様のもとに届けるのが効率的か?
④Promotion(プロモーション戦略)→○○のコンセプトを、どんなメディアを使って、どう表現すれば、○○のよさを伝えることができるか?

これらマーケティングの課題を解決するために、①から④のそれぞれに、「マーケティングリサーチ」が発生します。4Pの課題に限らず、たとえば顧客満足度調査など、マーケティング課題に対応したさまざまな「マーケティングリサーチ」も必要になってきます。「マーケットリサーチ」で分析した市場動向が、今後どのようになっていくのかを「マーケティングリサーチ」によって予測するのです。企業がよりよい商品・サービスを提供するためには、お客様を知ることが重要です。お客様をさまざまな角度から知るためには「マーケティングリサーチ」が不可欠なのです。そして、この「マーケティングリサーチ」の日本語訳にも一般的に「市場調査」が使われています。

「マーケティングリサーチ」の内容

商品名テスト

商品名の候補を複数用意し、その製品に合うものを選んでもらい、それに対する意見や印象を質問します。「パッケージデザイン」や「ロゴデザイン」などでも同様のテストをおこなうことがあります。

製品テスト

開発中の新製品や販売中の製品を実際に使用してもらい意見を集める手法で、製品に対する印象や改善点などを把握することができます。一般的に予想される消費者層(年齢・性別・職業などで絞り込む)を会場に集めておこないます。また、ホームユース・テスト(HUT)は、製品を自宅で使用してもらい、一定期間を経過した後、その結果を報告してもらいます。日常生活の中でのテストですので、企業が気づかなかった課題が浮かび上がることもある有効なリサーチ手法です。

事前事後調査

製品を使用する前後で購入の意向は変化したか、広告・プロモーション後に認知度やブランドイメージ、購入の意向は変化したか、などを調べます。

テスト・マーケティング(販売)

製品を実際に販売して、売り上げ動向をチェックします。多くの場合、地域を限定した上で広告・プロモーションなどをおこなって反応をみます。製品の認知度や購入数、シェアなどを集計した結果に基づき、全国発売後の売り上げを予測する手法です。

「市場調査」という言葉の意味

では、あらためて「市場調査」と「マーケティングリサーチ」の違いを考えてみましょう。
2つを比較すると、「マーケティングリサーチ」のほうがより範囲が広く、「市場調査」は「マーケティングリサーチ」の(とても重要な)一部分に含まれている、ということができます。
ところが「市場調査」と「マーケティング・リサーチ」の日本語訳はともに「市場調査」なのです。つまり、私たちが「市場調査」という言葉を使う場合、「マーケットリサーチ」という意味で使う場合と、「マーケティングリサーチ」という意味で使う場合があるということです。ここにさまざまな混同が起きてしまっている理由があるようです。

調査手法

このように、マーケティングリサーチとマーケットリサーチは、目的や対象範囲の違いはありますが、使われる調査手法は共通しています。収集したいデータの性質により大きく分けて「定量調査」と「定性調査」の2つの手法がありますので、その違いも見てみましょう。

定量調査

ある一定の数の消費者および顧客になりそうな人に対してアンケートを実施し、「25~29歳の人のうち15%が購入したことがある」「購入の際は価格を重視する人が45%」といったように、結果を数値で表します。グラフ化することで視覚的にも効果が高く、市場調査の最も代表的な方法といえます。近年は、インターネットリサーチや会場調査が主流ですが、郵送調査や電話調査などの手法もあります。

定性調査

属性(年齢・性別・職業など)が共通するグループに分け、それぞれインタビューを行うグループインタビュー、一人ひとりに詳しくインタビューするデプスインタビューなどがあります。。消費者の本音や本人も気づいていない潜在意識などを引き出す手法で、結果は言葉で表されます。

その他

調査員が自らの立場を隠し、実際に店舗に行ったり、サービスを利用した上で意見や感想をレポートするミステリーショッパー(覆面調査)は、チェーン展開する飲食店などのサービス業でよくおこなわれている手法です。経営者が、従業員の業務実態やサービスの課題などを把握するのに有効だとされます。

まとめ

「市場調査」と「マーケティングリサーチ」は、
「市場調査」を「マーケットリサーチ」という意味で使っている場合→別の意味
「市場調査」を「マーケティングリサーチ」という意味で使っている場合→同じ意味
ということになります。

私たちに必要なのは、まず「マーケットリサーチ」と「マーケティングリサーチ」の違いをよく理解することです。そして「市場調査」という言葉が、どちらの意味で使われているのかをしっかり把握して、対応しなければなりません。
一般財団法人日本マーケティング・リサーチ協会の「第42回経営業務実態調査(2017年7月14日)」によると、国内のマーケティングリサーチ業界の市場規模は、2016年度は2099億円、前年比107.9%という伸びを示しています。これは、マーケティングリサーチの重要性が多くの企業に浸透していることを示しており、どのような業種・業態であっても、有効な経営活動であるということです。
「市場調査」の意味と「マーケティングリサーチ」の意味をしっかり理解して、チャンスをつかみ取りましょう。