#29 デジタルトランスフォーメーションとは

デジタルへの変革

目まぐるしく変化する市場環境に対応するために「デジタルトランスフォーメーション」に取り組む企業が増えているようです。ただ単に取り組むだけでは、もはや他社と差別化できないともいわれています。デジタルトランスフォーメーションは2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した「ITの浸透によって生活のあらゆる局面をより良い方向にかえていく」というビジネス概念です。日本語に直訳すると「デジタルへの変革」です。デジタル化によって今までとは違った新しい物事を生み出すこと、と理解すればよいでしょう。デジタルトランスフォーメーションは、一般的に「DX」と略されますが、なぜ「DT」ではなく、「DX」なのかというと、英語で“Trans”は“X”と略されるためです。

マーケティングにおけるデジタルトランスフォーメーション

日常生活においてもITが幅広く活用されるようになり、お客様の購買行動もデジタル化しています。企業も、顧客サービスにITをいかに活用するかを考えることが必須となり、「第3のプラットフォーム」の重要度が高まっています。
第3のプラットフォームとは、
①高い普及率とインターネット閲覧利用率を誇る、持ち運び可能なスマホ、タブレットなどの小型コンピュータ・・・「モバイル」
②企業とお客様をつなぐコミュニケーションツールとして欠くことのできないFacebookやTwitterなどのSNS・・・「ソーシャル」
③企業の内外で日々蓄積され、事業に役立つ知見を導き出す膨大なデータ群・・・「ビッグデータ」
④インターネットなどのコンピュータネットワークを利用し、さまざまなサービスを提供する基盤・・・「クラウド」
のことで、これらを活用し、お客様との接点を増やし、最適な提案ができるかどうかが、企業の今後の命脈を握るといわれています。IT技術を駆使してお客様の満足度を高め、生活の質を向上することで自社の利益も拡大する、という一連の流れが求められているのです。これらを柔軟に取り入れ、商品・サービスの開発に応用した新規事業にはどのようなものがあるのでしょうか?

シェアリングサービス

個人や企業などが持つ「資産」を、インターネットの「マッチングプラットフォーム」を介して必要としている人に提供するのが、「シェアリングサービス」です。この場合、資産にはスキルや時間などの形の無いものも含まれます。カーシェアリングやレンタルスペース、民泊などが代表的なサービスです。家事代行、介護、育児などスキルを持った個人に仕事を依頼するのもシェアリングサービスです。「遊休資産を活用したい」というニーズの増加を背景に、自分が持つ資産に新しい価値を生み出すことができ、経済的に利用・購入が困難な利用者に対して安価で提供できる、といった理由で注目を集めています。また、利用者間の新たな関係性が築ける、社会的な課題の解決に貢献する、などといったメリットもあり、シェアリングサービスは今後も大きな広がりを見せるでしょう。

ダイナミックプライシング

需要と供給の状況に合わせて価格を変動させるのが「ダイナミックプライシング」です。航空会社のチケット、ホテルや旅館の宿泊料金などでは、以前から導入されています。需要が多い時期、時間帯には価格が高くても、どうしても購入したいお客様は納得して購入するので、収益の最大化が図れます。また、需要が減少する時期は値段を下げて販売し需要を喚起できます。こうした複雑な需給状況をAIがリアルタイムで分析し価格を変動させ、需要を調整するのです。販売実績や在庫状況だけではなく、天候や競合、SNSなどのビッグデータと掛け合わせて最適価格を瞬時に決めるシステムが整備されつつあります。人が決めるよりも早く、また複雑な条件を調整することができるので、データを蓄積すればするほど、精度も上がるといわれています。AIもまだまだ発展途上なので、ダイナミックプライシングも今後さらに拡大することで、売り手と買い手の双方が持つ複雑なニーズが最適化され、より便利に、より適切な価格を提示してくれるでしょう。

パーソナライゼーション

「パーソナライゼーション」とは、データ分析にもとづいて、お客様一人ひとりに最も役立つものを推測する、というマーケティング施策です。企業側で、お客様の好みに合わせたコンテンツやサービス、機能を提供しますが、必ずしも購入意欲を起こさせるものとは限りません。お客様との良好な関係を構築することが目的です。お客様にはさまざまな選択肢がある中で、このような提案の重要性は今後ますます増していくでしょう。身近な例としては、Amazonのリコメンデーションがあげられます。Amazonは、購入履歴や閲覧履歴をベースにどんな商品・サービスがお客様の好みに合うかを学習し、パーソナライズし、購入がしやすいように提案しています。

変革へのチャンス

膨大なデータをデジタル化して蓄積し、企業とお客様との良好な関係を築ければ、1回だけの顧客満足ではなく長期的に信頼や愛着を持つ「顧客ロイヤルティ」の高い状態を作り出すことができます。顧客ロイヤルティが高まれば、購入を継続する意向が高まり、年間の購入回数や購入金額も高くなります。リピート率も高まり、解約率は下がり、口コミでの拡散も期待でき、新商品や新規事業開発に活かすことができるでしょう。顧客ロイヤルティの測定・管理は、適切な市場調査を高い頻度で実施することによって効率的になります。また、1人のお客様からどれだけ収益をあげられるかという観点が、ITサービスを提供する企業の将来を左右するといわれています。ある程度の実績データを適切に集めて「ライフタイムバリュー」を正確に計算できれば、商品・サービスについてどのくらい顧客獲得コストを投入できるかの判断が迅速に下せます。変化が激しく先が見えない不透明な市場環境の中で、競争がますます激化し、企業の生き残りが一層難しくなっているという厳しい現状でも、新興企業がIT技術を活用した新しいサービスで急成長を遂げています。小規模な事業者でもアイデアとテクノロジーでイノベーションを起こすことができるチャンスなのです。企業を取り巻く環境は日々変化していきますが、この変化に対応し成長することこそが10年後も企業が生き残る道なのです。